まず、一般廃棄物と産業廃棄物とでは処理責任が違います。

廃棄物処理法では、「市町村は、一般廃棄物処理計画に従って、その区域内における一般廃棄物を生活環境の保全上支障が生じないうちに収集し、これを運搬し、及び処分しなければならない」となっています。

一方、産業廃棄物は、「事業者は、その産業廃棄物を自ら処理しなければならない」となっています。

つまり、一般廃棄物の処理責任は市町村にあり、産業廃棄物の処理責任は排出事業者にあるということです。

ここでいう排出事業者とは、製造工場、事業場からの廃棄物であれば、その事業者が排出事業者ですが、法律で明確に定められていない場合もあります。

例えば、工場、事務所の清掃を委託された清掃業者は、清掃前から存在する廃棄物を集めているだけであり、清掃で廃棄物を排出しているわけではありませんので、排出事業者とはいえません。

発注者の処理責任

建設廃棄物の処理に関しては、排出事業者である元請業者やその下請負人だけでなく、発注者にも責任と役割があります。

1.建設工事を行う以前からの廃棄物を適正に処理すること
これは例えば、解体予定の建築物の中に家具などが残されている場合などは、それらの廃棄物を適正に処理しなければならないということです。

2.元請業者に行わせる事項については、設計図書に明示すること
これには例えば以下のような項目があります。

  • 建設廃棄物の処理方法
  • 処分場所等処理に関する条件
  • 建設廃棄物を再生処理施設に搬入する条件等

3.企画、設計段階において、建設廃棄物に関する以下の項目について積極的に推進すること

  • 建設廃棄物の発生抑制
  • 現場で発生した建設廃棄物の再生利用
  • 再生資材の活用

4.積算上の取扱いにおいて適正な建設廃棄物の処理費を計上すること

5.元請業者より建設廃棄物の処理方法を記載した廃棄物処理計画書の提出をさせること

6.工事中は建設廃棄物の処理が適正に行われているか注意を払うこと

7.工事が終わった時は元請業者に報告させ、建設廃棄物が適正に処理されたことを確認する。また、建設廃棄物が放置されていないか注意を払うこと。

8.コンクリート、木材等の特定の建設資材を用いた建築物の解体工事等を発注する場合には、分別解体の計画等を都道府県知事に届け出るなど建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律に従うこと

以上のような責任と役割が発注者に求められていますが、発注者から設計を依頼された設計者も同様に上記の2~7の項目を実施しなければなりませんし、廃棄物の適正処理に関して発注者に助言することも必要です。

元請業者の処理責任

廃棄物処理法では、建設工事における廃棄物の排出事業者は元請事業者で、その処理責任があると規定されています。

たとえ、元請業者が、工事の全部を下請負人に一括して請け負わせていたとしても、処理責任は元請業者にあります。ですので、排出事業者である元請業者は、廃棄物の取扱いを下請負人任せにしてはならないとされています。

ただし、処理を他者に委託することはできます。その場合には、元請業者は、直接処理業者を選定したうえで委託契約を締結しなければなりません。

そして、処理を委託する際には、マニフェスト又は電子マニフェストを使用するなどして適正な処理をしなければなりません。元請業者から収集運搬の委託を受けた下請業者が発行するのではありません。

下請負人の処理責任

下請負人の処理責任は以下のとおりです。

  1. 建設廃棄物の発生の抑制を積極的に図ること。
  2. 排出事業者としての元請業者に自分の業態の廃棄物の内容を事前に知らせること。
  3. 工事にかかる前に元請業者が定めた廃棄物の処理方針を理解し、分別方法等について作業員に周知徹底させること。
  4. 下請負人が建設廃棄物を処理する場合は、処理業者としての許可を取得するとともに、元請業者と書面により委託契約を締結すること。
  5. 下請負人が現場内で行う廃棄物の保管については、廃棄物処理法第21条の3第2項の規定により、下請負人もまた排出事業者とみなして保管基準が適用されているため、基準を遵守すること。
  6. 廃棄物処理法第21条の3第3項の特例により、下請負人が自ら廃棄物を運搬する際には、この特例に基づくものであることを証する書面を携行するなど、廃棄物処理法に定める処理基準を遵守するとともに、運搬が終了した際には、元請業者に運搬が終了した旨を報告すること。

建設廃棄物を処理する際には、下請負人には以上のような責任が課されていますので注意が必要です。

建設廃棄物については、実際の工事の施工は下請負人が行っている場合であっても、発注者から直接工事を請け負った元請業者を排出事業者とし、元請業者がその処理責任を負うことになっています。(廃棄物処理法第21条の3第1項)

しかし、下請負人にも責務と役割があります。

下請負人の責務と役割

1.建設廃棄物の発生の抑制を積極的に図る。

2.排出事業者としての元請業者に自分の業態の廃棄物の内容を事前に知らせる。

3.工事にかかる前に、元請業者が定めた廃棄物の処理方針を理解し、分別方法等について作業員に周知徹底させる。

4.下請負人が建設廃棄物を処理する場合は、処理業者としての許可を取得するとともに、元請業者と書面により委託契約を締結する。

5.下請負人が現場内で行う廃棄物の保管は、下請負人もまた排出事業者とみなして保管基準が適用されるため、基準を遵守しなければならない。(廃棄物処理法第21条の3第2項)

6.廃棄物処理法第21条の3第3項の特例により、下請負人が自ら廃棄物を運搬する際には、その運搬が特例に基づくものであることを証する書面(運搬様式)を携行するなど、廃棄物処理法に定める処理基準を遵守する。運搬が終了した際には、元請業者に運搬が終了した旨を報告する。

7.元請業者が破産等により消失した場合は、下請負人が事業者とみなして、廃棄物の処理の委託に関する規定が適用される。

8.元請業者の指示又は示唆に従い、下請負人が廃棄物の処理を他人に委託した場合は、元請業者は委託基準に違反する。この場合でも、委託時点で元請業者に委託基準が適用される。

以上のうち、5~8については特に注意が必要です。